テキパキ英語

英語に翻訳しにくい日本語の単語を中心に、ぴったりの英語表現を見つけるための発想の転換のヒントと英訳の実例を紹介しています。

「疑義」の英訳は「疑問点・不明点」として考えるとスムーズです

「疑義が生じた場合」などの かしこまった表現で使用される「疑義」という単語。

できれば「question」などの見慣れた単語で訳した方が、文法ミスなどを防ぐ意味でもお勧めですが、常に「question」でよいのかなどは迷いどころですよね。

人を主語にする場合や物を主語にする場合などに分けて対応する英語表現をまとめてみました。

 

1.「I」や「You」など人を主語にした表現

1-1.「If you have any ~」のかたちで「疑義」の訳に使える名詞

「疑義があれば、~までお問い合わせください」などの文は「any + 単数形」を使用してシンプルに次のように訳すことができます。

If you have any question, feel free to contact me.

If you have any uncertainty, ~

If you have any doubt, ~

If you have any ambiguity, ~

If you have any query, ~

If you have any concern, ~

「疑義」という堅苦しい語を「疑問点」や「不明点」、「曖昧な点」などと考えるとシンプルな英文を考え付きやすいかと思います。

最後の「concern」は「懸念点」などと訳せますが、類似表現としてここに含めました。

「お気軽にお問い合わせください」の部分は「feel free to contact me」や「don't hesitate to contact us」などの表現が利用できます。

また、「If there's any ~」というかたちで、

If there's any question/uncertainty/doubt/ambiguity/query/concern」という書き換えも可能です。

 

1-2.「主語の人+be動詞+形容」のかたちで「疑問を持っている」を表せる表現

If you're uncertain, ~

If you're doubtful, ~

If you're not clear,

If you're not sure,

If you're unsure,

If you're unclear,

引き続き「疑義があれば~」という例文ですが、こうした形容詞を使用して「疑義がある」という人の状態を表現することができます。

また、「uncertainty」という名詞に対して「uncertain」という形容詞など、品詞を変更しただけの表現も多いので、こうした単語同士がリンクしてくると、英語の理解・表現力にも奥行きや立体感が出てくるかなと思います。

 

2.事物に疑義があることを「形容詞+もの」や「主語のもの+be+動詞+形容詞」で

続いて人を主語にしないパターン。

「疑義のある証拠」や「疑義のあるロジック」などは次のように表現できます。

questionable evidence, questionable logic

また、ものを主語にする形だと、「The evidence was questionable.」などと表現できます。

 

注意したいのは、この「questionable」という形容詞は「If you're questionable.」という先ほどまでの形では使用できないということです。

仮に使用してしまうと「証拠が疑わしい」というのと同様に「あなたが(本当のことを言っているのか)疑わしい」ですとか「あなたに資格があるのか疑問だ」のようなネガティブな意味になってしまいます。

「疑義」という単語の訳として列挙されている英単語の中には、こうした注意が必要なものも含まれるので、必ず英和辞典などで用法を再確認してから使用したいですね。

「questionable evidence」と同じような形で使用できる形容詞としては「ambiguous evidence」、「dubious evidence」などがあります。

 

さらに、もしかしたら混乱させてしまうかもしれませんが「If you're doubtful」、「If you're unclear」の形で使用できた「doubtful」や「unclear」については、「doubtful evidence」や「unclear evidence」、「The evidence was doubtful/unclear」などの使い方が可能なので、しっかりと整理しておきたいですね。

 

3.「あなたに対して疑義がある」は失礼な言い方なのでNG 

ここまで比較的シンプルな文例に基づいて言い換え表現を確認してきましたが、英訳の上では、原文への表面的な忠実さ以上に、相手がその文章をどう受け取るのかへの配慮が大切な場面も多いです。

 「反対」の意見を言うときも、

(×)I don't agree with you. のように相手自体を否定する表現ではなく

(○)I don't agree with this. 「これには賛成できません」のようにある点において賛成できないと言うのがよいということはすでに学びました。

それと同じと考えればよいでしょう。

 

・ちょっと信じられませんね。

(×)I don't believe you. 「あなたのことが信じられません」

(○)I'm having difficulty believing this. 「これを信じるのはちょっとむずかしいですね」

日本人が間違えやすい英語表現(6) (1/3ページ) - 実践ビジネス英語Q&A : 日経Bizアカデミー

どうですか? 「行為やものを憎んで、人を憎まず」という精神ですね。

特に英語では自分の意図以上に相手を責める表現になっている可能性もありますから、注意が必要です。

 

「それって本当なの?」という突っ込みも、次のようなかたちだとNGになりえます。

・ それはどうかなあ。

(×) It's a lie. 「嘘だね」

(×)Is it true? 「それ本当?」

* 疑いが前面に出ています。

 

(△)I don't think it's true. 「本当だとは思わないな」

* 少し疑義のニュアンスが薄められています。

日本人が間違えやすい英語表現(6) (2/3ページ) - 実践ビジネス英語Q&A : 日経Bizアカデミー

こうした直接的な表現を、次のように「confused」や「I don't quite follow.」などの表現に言い換えられると、コミュニケーションをスムーズにできるかと思います。

元記事全体も是非目を通してみてください。

(○)I'm a bit confused. 「ちょっと混乱しています」

(○)I don't quite follow. 「何かピンとこないんだけど」

(○)Give me a second to digest it.  「ちょっと考えてみます」

日本人が間違えやすい英語表現(6) (2/3ページ) - 実践ビジネス英語Q&A : 日経Bizアカデミー

 

 おまけ:契約書に登場する「疑義」

最後に、契約書などで登場する「疑義」がどう訳されているか、法律関係の翻訳の専門家による記事へのリンクも2つ挙げてみます。

第5条 (疑義の解釈)
本契約に定めのない事項その他本契約に関し生じた疑義については、甲及び乙が誠意をもって協議のうえ解決するものとする。

Article 5 (Interpretation of Ambiguities)

Matters not stipulated in this Agreement and any other ambiguities which arise in relation to this Agreement shall be settled through consultation in good faith by the Customer and Company YYY.

第3回「契約書の英訳〜応用編」 - ハイキャリア - 翻訳

(例文2)

本契約に定めのない事項又は疑義が生じた事項については、信義誠実の原則に従い甲乙協議し、円満に解決を図るものとする。

(訳例)

Any matters not addressed in this Agreement, or any doubt or uncertainty with respect to this Agreement, shall be determined or resolved through good faith consultation between the Parties.

契約書翻訳│ブリッジリンクの高品質な契約書の翻訳

 契約書関係の翻訳自体は専門家に依頼するケースが多いかと思いますが、簡単なチェックの場面では「疑義」を「曖昧な点」や「疑問点」、「不明点」として、「ambiguity」や「doubt」、「uncertainty」などと訳すことを知っているとチェックでも役に立つかと思います。

 

いかがでしたでしょうか?

「疑義」を名詞で表現するのか形容詞で表現するのか、人を主語にするのか事物を主語にするのかでもいくつか言いかえのオプションが存在しました。

自分にしっくりくる単語を、用法を確認しながら使用したいですね。

また、相手を責める表現はなるべく避けるといったコミュニケーション上の配慮も欠かさないようにしたいものです。