テキパキ英語

英語に翻訳しにくい日本語の単語を中心に、ぴったりの英語表現を見つけるための発想の転換のヒントと英訳の実例を紹介しています。

「三文判」や「シャチハタ」を英語で伝える表現を少し深堀り

「印鑑」を使う文化の日本と、「サイン・署名」の英語圏、「三文判」や「シャチハタ」にぴったり対応する英単語はないので、最大公約数的な単語を使うのが一番安全です。

その上で、この記事で紹介する3つのポイントを押さえておけば、英語で印鑑関連の説明をするときにも慌てずに話を進められるかと思います。

 

 

「三文判」と「シャチハタ」に対応する最大公約数的な表現

「三文判」は日本の代表的な名字について文房具屋さんでずらっと並んでいる判子ですが「既製品の印鑑」と解釈して「ready-made seal」、もしくは「安い判子」と解釈して「cheap seal」と訳すのが一番伝わりやすいです。

これに対して「シャチハタ」はゴム製でなおかつ朱肉ではなくインクを使用しますよね。

これらのポイントから「self-inking stamp」、「self-inking rubber stamp」などが最大公約数的な表現になってきます。

ちなみに、シャチハタ社の英語ページでは「self-inking stamp」という表現が採用されていました。

www.artlineworld.com

 

英語の「seal」と「stamp」の違いと、「社用」というメインの意味

では、なぜ三文判のときには「seal」、シャチハタのときには「stamp」という単語をメインで使用したのでしょうか? 

この点を理解するには、三文判と seal の対応関係や、シャチハタと stamp の対応関係を考えていても埒があきません。

ポイントは英語内部での「seal」と「stamp」との関係にあります。

The term ‘seal’ can refer to a device used to make an impression in wax or paper, as well as the actual impression itself.

Stamp’ refers to a rubber stamp, a device where ink is applied to an image, pattern or text that has been moulded onto a sheet of rubber and mounted on a block.

(中略)

Today, the terms seal, stamp and chop are basically interchangeable and often refer to the same thing: a stamp or rubber stamp.

Stamps, seals and chops

 「seal」と「stamp」は現在ではほぼ同じ意味で使われるという但し書きもありますが、元来の意味としては「stamp」の方が特にゴム製でインクを使うという含意が強かったのですね。

なので、シャチハタは「stamp」という単語を使用して表現する方がぴったりなわけです。

それに対して「seal」は、手紙の封をするロウに「跡」をつけることなどが説明されているように、金属や石などの硬い素材でできているというのが元来の意味です。

なので、値段に関係なく、シャチハタ以外の、ゴム以外の素材でできている印鑑については、三文判も含めて、「stamp」でなく「seal」という英単語を使用する方が適切度が高いわけです。

このような「素材」の違いがポイントだったわけです。

その上で、もう一つ確認しておく必要があるのは、「seal」も「stamp」もメインの意味は会社や組織の公式の印鑑であるということです。

「seal」の方が「stamp」より公式度が高いという面はありますが、日本の印鑑と比べると、「seal」も「stamp」も公式のという性格が強いです。

なので「seal」を単独で使用すると、日本語で対応するのは「社用印」などになるわけです。

それに対して日本語の「印鑑」に対応させるには「pearonal seal」と、「個人用の」という形容詞を付ける工夫が必要になるわけですね。

 

日本語の「三文判」と「シャチハタ」の違いと、「個人用」というメインの意味

最初にも確認しましたが、三文判とシャチハタの違いは、素材や、使用するのが朱肉かインクかなどの「物理的な性質」の違いです。

さらに日本では、既製品でなく、一つ一つ手作りの印鑑をオーダーメイドで購入することもできますね。

そして、三文判もシャチハタも手作りの印鑑も、もっぱら個人用 のものを意味します。

 

日本語の「実印」と「認印」の違いとポイント

 そして、「三文判」や「シャチハタ」や「オーダーメイドの印鑑」という区別と同列に語ってしまいがちですが、「実印」や「認印」という区別は、登録がされているかいないかという「社会的な役割」の違いです。

実印は、人生において重要な契約や高額な契約に用いるハンコ。

お住まいの市区町村の自治体に登録している印鑑です。

登録することでその印鑑が自分を証明するものになります。

そのため、実印は厳重に取り扱う必要があり、気軽に捺印してはいけない印鑑です。

また、三文判という役割のハンコは存在しません。

三文判は大量生産された安い印鑑のこと。同じ姓であれば、同型のはんこが沢山あります。

つまり、実印と三文判は全く別物で、実印印鑑の種類(用途、役割)、三文判大量生産された安価なハンコの総称です。

三文判って何?実印や認印、シャチハタとの違い | 実印の作り方合っていますか?これだけは知っておきましょう!

 上のサイトの説明が分かりやすいですが、カテゴリわけの観点が違うのですね。

三文判は「認印」になることができます。

三文判を「実印」として登録することもできますが、これはセキュリティ上お勧めされません。

「実印」として登録するなら、オーダーメイドの印鑑がよいです。

シャチハタは「認印」としての使用も通常は認められないので、非公式の文書などでの使用がメインとなります。

 

こうした日本語内の構造までしっかり理解しておけば、英語での説明もクリアに行えるかと思います。