「標榜する」という言葉を英語にしようとウェブサイトを検索しても、なかなかぴったりな単語が見つかりませんし profess、stand for、advocate などあまり見慣れない難しそうな単語が並んでいます。
こういった場合、まず日本語の意味自体を確認し、主な用法に分けて英訳を考えることが有効です。
1.「標榜する」の意味を国語辞書で確認する
[名](スル)1 善行をほめたたえ、その事実を記した札を立てて世に示すこと。また、その札。
2 主義・主張などをはっきりと掲げ示すこと。「自由と民主主義を標榜する政党」
標榜(ひょうぼう)の意味 - goo国語辞書
1番の意味はかなりマイナーなものになると思うので、ここでは2番の意味をターゲットにすることにします。
「主義」や「主張」というキーワードや、「はっきりと掲げ示す」というニュアンスは確認できましたが、まだいまいちピンと来ない部分がありますね。
ここでは、国立国語研究所が提供しているデータベースを使用して、「標榜する」という言葉が一緒によく使われる単語などを確認してみましょう。
2.国立国語研究所のデータベースで「一緒によく使われる言葉」を検索
「一緒によく使われる言葉」を専門用語では「コロケーション(共起語)」と呼びます。
日本語に対するコロケーションのデータベースとして国立国語研究所が公開しているものをここでは検索してみましょう。
「~を標榜する」というかたちについて調べることで、目的語としては「~主義」を筆頭に「~国家」、「~都市」、「~立場」などの言葉を使用することが多いと分かります。
続いて、「誰が・何が」の部分に当たる言葉を調べてみると、人名や、国家・地域、教育などが主語になるということが分かりました。
さらに、具体的な例文まで行くと「標榜する」の使い方として、どうやら次の3パターンがあることが分かりました。
(1)「~が(自分自身が・それ自身が)~だと主張する」
(2)「~が(自分自身が・それ自身が)~になることを目指す」
(3)「~が大切だと主張する(主張している人自身とは関係ない)」
この場合分けを行うことで、よりシンプルな英語表現を見つけられそうです。
順にみていきましょう。
3.主なパターン別の「標榜する」の英訳
3-1「~が(自分自身が・それ自身が)~だと主張する」
例:「エコロジストを標榜する人たち」
「people who claim that they are ecologists」
「主張する」という意味の「claim」を使うことでシンプルにまとまりました。
「ecologists」の部分を「vegetarians」などに入れ替えて使用することができます。
知事は自らをフェミニストと標榜している. The governor claims to be a feminist.
標榜を英語で・英訳 - 英和辞典・和英辞典 Weblio辞書
また Weblio にはこちらのように「to be ~」のかたちで「claim」を利用した例も見つかりました。
より堅い言い方として「The governor profess himself to be a feminist.」という書き換えも紹介されています。
3-2「~が(自分自身が・それ自身が)~になることを目指す」
最初のパターンが、既に~になっていることを意味していたのに対して、こちらはまだ実現を目指している段階というパターンですね。
英語としては分けて考えた方がよいでしょう。
例:東京はスマートシティを標榜している.
Tokyo aims for smart city.
aims for などのフレーズが利用できそうです。
また、標榜される部分が「キャッチコピー」的な次の場合などは「motto」や「slogan」などの名詞も活用できそうです。
例:「打倒マイクロソフト」を標榜していたX会長
Mr. X, whose motto was "Beat Microsoft",
3-3「~が大切だと主張する(主張している人自身とは直接関係しない)」
例:彼は自由市場を標榜した
He advocated a free market.
ここでは、主語が彼、目的語が自由市場で、「彼=自由市場」という関係が成り立ちません。
この場合に「He professes himself to be a free market」などと機械的に訳すと、「彼は自分自身が自由市場だと主張した」のように変てこな英語になってしまいます。
動詞としては「advocate」のかわりに「stand for」や「support」など「支持する」という意味合いの単語を利用できるかと思います。
いかがでしたでしょうか?
日本語の意味を明確に理解し、状況をいくつかに分解する手法は、他の難解な単語の英訳でも活用できるので是非お試しください。